シュレッダーは、共有しないことをお勧めする。その理由は「シュレッダーハラスメント」になるからである。
共有シュレッダー
私の働いている会社では、私の席がある事務所に大きめのシュレッダーが設置してある。必要があれば、社内全員が使用することができる。つまり共有しているとても危険な状態だ。
ちなみに「シュレッター」ある?と聞いてくる部長がいて、私は丁寧に分かりやすく「シュレッダー」はここですよ、と教えてあげている。英語で書くと「shredder」だから、読み方は「シュレッダー」なのだ。何度も「シュレッダー」と言っているが、シュレッタ部長は相変わらず「シュレッター」を止めない。まるで濁点だけが、部長の耳に届く前に細かく切り刻まれパラパラと床に落ちているようだ。
シュレッタ部長
ある日、気が付くとシュレッタ部長が「シュレッダー」に紙を入れていた。間違った呼び方をしているが、使用頻度は高い。
紙の束をドンドン吸い込ませていくが、バリバリバリーという音がピタッと止まる。一瞬シーンとなる事務所内、その場にいた全員が満タンになったと思った。そのあと紙くずボックスを引き出す音がしたので、捨ててくれているとありがたく思った。その後、シュレッタ部長は持っていた紙を、全て吸い込ませ立ち去っていった。
数時間後、次に私がシュレッダーに紙を入れる。バリバリと軽快に紙を吸い込んでいく。しかし2〜3枚吸い込ませたところで、エラーランプか点灯して止まってしまった。
あれ?おかしい。先程、部長が捨ててくれたから、満タンではないはず。運悪く詰まってしまったのだ。中を見てみようと思い、ボックスを勢いよく引き出してみた。次の瞬間、シュレッダーが爆発したかのように、大量の紙くずが宙を舞い、ヒラヒラと床に散乱した。
まるで今生の別れを、演出するかのような紙吹雪。顔面を白塗りして「男と女~あやつりつられ~♪」(※1)と歌いだしたくなる舞台演出に、気持ちも上がる。
※1 夢芝居 梅沢富美男 作詞:小椋佳 より引用
しかし歌っている場合ではない、事務所内で一人、全身紙くずまみれになっているのだ。この状態を誰かに見られたら、驚かれてドン引きされてしまうだろう。そして後日「あんなことをする人だと思わなかった」などど言われてしまうだろう。早く片付けなければ。
ボックス内を確認すると、ギュウギュウに押し込められた紙くずが見える。触ってみると鉛の塊のようにカチカチで、これが突っかかっていた。勢いよく開けたときに、内と外の空気圧差で紙くずが舞い上がる仕掛けが作られていた。
誰がこんな仕掛けを?有名な演出家でも雇ったのか?
ハッと閃く!そう言えば先程、シュレッタ部長が使っているとき、途中で音が止まった。そのときに、紙くずを取り出して捨てたのではなく、この演出装置を人知れず作成していたのだ。
お手本になる立ち振舞をしなければならない、部長であるのに何をしているんだと、怒りを覚えてしまう。ギュウギュウ紙くずを取り出し、頭に投げつけてやろうかと想像する。そして頭にヒットさせ爆発させた紙吹雪のなか、今生の別れをしてやろうかと思うが。。。一旦冷静になろう。
きっと忙しいお方、いくつもの仕事を抱え、紙くずを捨てるという業務を考えるスキもなかったのであろう。。。やっておきます。落ち着きを取り戻しながら、箒とちりとりで舞台を掃除するのであった。
シュレッタ部長からのシュレハラは、この一度ではなかった。その後も何度か続き、そのたびに私の中の梅沢富美男が暴れていた。しかしテレビを見ると、本物の梅沢富美男はレモンサワーのCMで顔面を黄色くされ、ポップでカジュアルな感じになっていた。
怒りキャラではなくなってしまい、バラエティ寄りになっていたのだ。あの年齢で顔面を黄色くすることを考えると、紙くずまみれなど気にすることはない。何度シュレハラを味わっても乗り越えられそうな気がする。
というわけであの鮮やかな黄色に、シュレッタ部長は救われているのだ。もっと梅沢富美男に感謝すべきだと思う。
とはいえ、知らずしらずのうちにあなたもシュレハラの被害者や加害者になっているかも知れない。やはりシュレッダーの共有はおすすめしない。